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特別編アーティストのアトリエより―高橋秀・藤田桜【アートシーン】

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特別編アーティストのアトリエより―高橋秀・藤田桜

アートシーンは特別編。

「アーティストのアトリエより」と題してお届けする。

2019年7月に放送した「日曜美術館」からアーティスト高橋秀さんと、絵本作家で布貼り絵作家の藤田桜さん夫婦の暮らしと制作の様子を撮影した。

合計183歳の素敵なふたりが織り成すハーモニー。

 

放送:2020年5月17日 

 

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穏やかな瀬戸の夕凪です。

岡山県倉敷市ここに素敵なアーティスト夫婦が暮らしています。

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白い髭とロングヘアーがお似合いの高橋秀さん。89歳。

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左翼側に立つのは藤田さくらさん。94歳。

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浜辺が目の前に広がる場所に二人の住まいとアトリエがあります。

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展覧会のための制作に取り組んでいるという秀さんのアトリエ。

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向き合っていたのはキャンバスならぬベニヤの板です。

鉛筆で直接線を描いていきます。

今度は消しゴムで線を消していきます。

何度も線を引いたり消したり。

「ただ丸いだけならコンパスでいい。どっかにひずみを作って円を動かしたいわけよ」

求めている一本の線はいったいどこにあるのか葛藤が続きます。

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近年の代表作《黄金の稜》

輝く壮麗な画面。

まさに現代の琳派です。

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こちらはリビングルーム

さくらさんのアトリエです。

互いに干渉せずそれぞれの場所で仕事をするのが二人のルール。

さくらさんは絵本作家であり布貼り絵作家。

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子供向けの雑誌「よいこのくに」の表紙絵を創刊号から40年近く担当してきました。

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さくらさんの布貼り絵はまず布を選び、イメージする形に切ることから始まります。

「切って貼っているだけで、こういうもの作りたいなと思っていると手が動いちゃうんです。一人でに。これはこんな風に布を使って作ったんですけど。あの割と最近ですねバックはねこれこんなに色が混ざっていますでしょ。本当に何枚か布を合わせているのです」

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こちらは画面いっぱいに表現された一本の桜。

ピンクの布地の質感が桜の魅力を語ります。

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唐辛子をモチーフにした幻想的な作品です。

遠い山並み。銀色の月。そして空飛ぶ唐辛子。

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秀さんと桜さんは2004年この海辺の街に移り住みました。

それまでの41年間はイタリアローマに暮らしていました。

 

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二人が結婚したのは1958年のこと。

広島県福山市から画家を志して上京。

アルバイトで暮らしていた秀さん。

絵本作家で雑誌の編集者としても活躍していたさくらさん。

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秀さんは画家の道に専念するためさくらさんに両手をついて当分食わせて頼んだといいます。

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秀さんの人生に転機をもたらした作品《月の道》

セメントを使った独特の質感が強い印象を与えます。

月の道は洋画家の登竜門である安井賞を受賞。注目の作家となります。

「安井賞画家と首輪をはめつけられるのと、それから色んな画商さんがやってくる。素直に従っていると殺されると思った」

その状況から脱出しようと1963年。秀さんはイタリア政府留学生としてローマに渡ります。

行くべき道を模索し続けついに独自の表現を確立しました。

《瞑想白》1970年代からエロスの画家、高橋秀と呼ばれるようになります。

極度に単純化された大胆なフォルム。

怪しく際どく高橋秀の到達点です。

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1980年代に入り作品は巨大化します。

赤と黒のダイナミックな画面。

生命と宇宙の根源的な世界の象徴です。

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1993年。ローマ国立近代美術館で滞在三十周年記念の個展が開かれました。

日本人初の快挙でした。

 

一方さくらさんも「よいこのくに」の表紙を手がけつつ、絵本の製作に取り掛かります。

イタリアの作家フォローディのピノッキオ。

布貼り絵の手法で制作したさくらさん最初の絵本です。

生き生きと描かれた登場人物たち。

童話絵本の名作を作り上げたのです。

 

電動のこの音が響く秀さんのアトリエ。

かなりユニークな制作現場です。

迷いに迷った円の形。

秀さんは納得のいく一本の線を見つけていました。

キャンバスも自分で作ります。

裁断したベニヤ板にキャンバス地を張ってホチキスで止めて行きます。

一つ一つの工程を丁寧にこなしていく秀さん。

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「決して職人仕事がおろそかであったら、作品の完成度っていうのがやっぱり鈍ってくるし、職人仕事の中にアーティストの怨念も含まれてんじゃないかな」

リビングルームではさくらさんの作業が続いています。

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「自分が今ここにある布で、どの切れを選んだらこういう効果が出るかって事考えます。これを今どうしようかなと思って。ない方が良いかあった方がいいか」

最後までコラージュに迷うさくらさんです。

秀さん制作もいよいよ終盤。

円形のキャンバスに鮮やかな茜色のアクリル絵の具が塗られていきます。

刷毛の跡を残さないよう、高い集中力と経験が求められます。

「たぶんOKでしょう」

2019年7月。東京で秀さんとさくらさん二人の展覧会が開かれました。

東京、ローマ、倉敷。

それぞれの時代の作品300点が並びました。

リビングルームのテーブルで切ったり貼ったり。

さくらさんの魔法の手が作り出した愛らしい作品です。

「デッサンも何もしないで、布とハサミそれだけで作ったものなんですけどね。

あの時は何か夢中でやってましたけどね」

秀さんの最新作が飾られた展示室。

茜色に彩色されたはずの円。

驚いたことにそこは黒く塗られていました。

「最初はこの輪を主人公にしようと思ってたんだけど。やってるうちに輪では持たなくて、結局この輪の中を空っぽしたいという思いで、黒じゃなくてこれ、消炭色って言うから空にしたんです」

「人生とはなんじゃ」

「私の人生は幸せだと思って」

「それはなぜと共に生きてるから」

「いい旦那です。ムリじゃなく本当にそう思いますよ」

「何が幸せだろうね。毎晩で晩飯の前に彼女はお酒。私はワインで乾杯すんの。おめでとうって。何がおめでとう。今日も生きてたねっていうことでね。それから文句言うことは文句を言う。だけどその前に今日もおめでとうっていうことでね」

 

番組のディレクターが電話でお話を伺いました。

去年は4箇所で開かれた展覧会のために講演会やワークショップなどで大忙しだったというお二人なんですけれども、今は次の展覧会に向けて構想の時間。次々とアイデアが湧くと秀さんはおっしゃっていたそうです。

 秀 art studio - 投稿

放送記録 

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