北脇昇 一粒の種に宇宙を視る
二つ並んだかえでの種は戦闘機。
枯れたひまわりの花は管制塔のようです。
この作品は日中戦争が始まった年に描かれました。
戦争の時代を中心に活躍した北脇昇の展覧会です。
北脇は1901年生まれ。
京都で活躍しました。
シュルレアリスムの影響を受けた画家として知られています。
ユーモラスな顔と思いきや、実は無脊椎動物ヒドラとその断面図です。
今回の展覧会で特に注目しているのは図式を描いた作品群です。
これは因数分解の公式を絵にしたもの。
画面左下はAの二乗。
2掛けるAB。
右半分はA+Bの二乗を表しています。
北脇は作品についてこう述べています。
「本来抽象的な概念内容の完成化を試みた。新世界への探検である」
「前衛美術というと、ヨーロッパから新しいものが入ってきて、その影響のもとに作るって人が多いですけれども北脇昇は自分でいろんなことを考えて、どんどんそれを自分のものにしてしまう。
そして戦争の時代の中で世の中がこの先どうなっていくかわからないっていう時に、ひょっとしたらそういう分からない時代でも何か法則があるかも知らない。それを絵にすることができたら世の中の役に立つかもしれないっていうふうに考えたらしいんですね。そこが北脇昇のとても面白いところだと思います」
北脇の発想の背景にはドイツの文豪ゲーテの共感がありました。
データは植物から芽が出花が咲くという変化を観察し、そこにある法則を明らかにしようとしました。
北脇もゲーテと同じ態度で世界を観察すれば何か法則が見つかるかもしれないと考えたと言います。
北脇の関心は東洋の思想へも向かいます。
この絵では世界を陰と陽で解釈する中国の易の考え方を取り入れています。
上は陽の世界。下は陰の世界。
北脇は陰と陽とが混じり合い穏やかに調和する世界を表現しようとしています。
戦争中の困難な時代によって独創的な試みです。
東京国立近代美術館で10月25日まで。
会場:足立美術館
会期:2020年9月11日~10月25日
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