チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「画家・安野光雅 雲中一雁の旅」

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去年12月に94歳で亡くなった安野光雅さん。

9年前、ライフワーク「旅の絵本」を、日本を舞台に描く姿に密着していた。

「雲中一雁」とは、雲の中で群れにはぐれたのか、一羽の雁が飛んでいく様を表す中国の言葉。

その姿に、絵描きの自分が重なると語る。

創造の原点、ふるさと津和野での制作は、ペンによる下絵から始まり、彩色、完成へと進む。

自身による「絵のある自伝」の朗読を交えて、新作に寄せる思い、創作の真髄に迫る。

【司会】小野正嗣,柴田祐規子

 

 

美術の窓 2021年 1月号

美術の窓 2021年 1月号

  • 発売日: 2020/12/19
  • メディア: 雑誌
 

 

 

 

日曜美術館「画家・安野光雅 雲中一雁の旅」

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放送日

2012年9月9日

 

画家・安野光雅さん。86歳。

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今、安野さんが書いているのは30年来のライフワーク、旅の絵本シリーズの日本編です。

絵本作家。イラストレーター。エッセイスト。

様々な顔を持つ安野さん。

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1968年《不思議な絵》で絵本の世界に登場しました。

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一変して日本画の手法で描かれた大作《絵本平家物語》は、繊細な墨絵のタッチと豪華な色彩の歴史絵巻です。

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去年。安野さんは一冊の本を出版しました。

絵のある自伝 (文春文庫)

生い立ちから60年を超える絵画人生が綴られた初めての自伝です。

その人生とはどのようなものなのか。

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「雲中一雁」

かつて中国の旅で出会い、強く惹きつけられたこの言葉に、安野さんは自らの思いを託しました。

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「雲の中の群れに遅れたのか、ただ一羽飛んでいく雁が見える。はぐれてしまったのか。でも飛んでいこうという感じ。絵描きはみんなそうなのか。私1人がそうなのかよくわからないが、雲中一雁は気に入って、絵のある自伝には相応しいかなと思っている」

 

 

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山々に囲まれた島根県津和野。

群れることなく一人我が道を歩んできた安野さんの雲中一雁の旅。

その出発の家がふるさと津和野です。

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古い家並みの続く城下町の一角に2001年、町立安野光雅美術館が開館しました。

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安野さんの絵本、画集、原画などおよそ3500点が収蔵され、季節ごとに様々な企画展示が行われています。

展示室の奥にはちょっとユニークな空間があります。

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安野さんの子供時代をイメージして昔の小学校の教室が再現されているのです。

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美術館二階に安野さんのアトリエがあります。

いよいよ旅の絵本シリーズ日本編の制作が始まりました。

ペンで描かれていく下絵。

気の遠くなるような細かい作業です。

「他に方法がないからね。少々曲がってもいいから、こうやってフリーハンドで描いた」

細密画のように克明に描かれていく屋根瓦。

一体どんな作品が生まれるのでしょうか。


 

 

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旅の絵本セット (安野光雅の絵本)

旅の絵本セット (安野光雅の絵本)

  • 発売日: 2013/05/25
  • メディア: 単行本
 

 

さて安野さんのライフワーク旅の絵本シリーズ

これまでイタリア、イギリス、アメリカ編など7冊が出版されました。

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第1巻、中部ヨーロッパ編。旅の絵本 (安野光雅の絵本)

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物語は人気のない海岸に手漕ぎボートの旅人がやってくるところから始まります。

旅人は村の農夫から馬を借り、見知らぬ国へ旅に出ます。

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森を抜け、村を通って人々の暮らしにふれながら進みます。

旅の絵本には安野さんならではのワンダーが隠されています。

画面のあちこちにちょっと見覚えのあるシーンがありませんか。

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ひょっとしてゴッホのアルルの跳ね橋。

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こちらにはミレーの落穂拾い。

旅の絵本には名画の隠し絵パズルを解く楽しみはあります。

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何とカラフルで楽しげな画面でしょう。

着飾った人々。

祭りのパレードです。

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ラストページ。

旅人は馬から降り、丘を越え去って行きます。

さて次はどこに行くのでしょう。

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「昔はロシアの上空が飛べなかったので、アンカレッジ経由で北から下がるようにヨーロッパへ行った。あの時飛行機が下がる時の視点で一度にたくさんのものを見た。

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西洋と日本では言葉や文字や食べ物など何もかも違う言葉で珍しいと思ったがドイツの教会で結婚式を見て、あっ泣いてる人はお母さんに違いないと悟ったことがある。私たちは西洋と東洋の違いにばかり目が行くが、よく考えてみると、違うところよりも同じ事の方が多い。みんな同じ地球の上に住んでいる。

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そして国それぞれ、人それぞれに違った毎日送ってるのだと感じた。その時一千もの人々の暮らしが詰まった旅の絵本を描きたいと思った」

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旅の絵本第二巻イタリア編。旅の絵本2(改訂版) (安野光雅の絵本)

広々としたトスカーナの風景に魅せられていた安野さん。

旅人もこの家から出発です。

さてイタリア編にも安野さんの企みが隠されています。

それは聖書の物語。

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天使がマリアに、あなたは神の子を身ごもったと告げる受胎告知。

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そしてこちらはイエスキリスト誕生のシーンです。

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一体ここはどこでしょう。

ローマの有名な観光名所、トレビの泉があるかと思えば、こちらにはなんとアラビアンナイトのアリババと40人の盗賊のワンシーン。

階段を駆け下りる少女はシンデレラでしょうか。

イタリアの旅はまさに安野さんのファンタジーワールドです。

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「ヨーロッパの旅をしていますとね、だんだん駅が近づいてくるなという匂いが経験上してくるんです。町を過ぎて村を過ぎてで守りに入ってて森を抜けてまた町があるというような、自然の成り行きのようなもの。結局そういうところを歩いていくと旅だったと思うしね」

 

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旅の絵本イギリス編。旅の絵本3 (安野光雅の絵本)

オリンピックでおなじみとなったロンドンタワーブリッジ

馬上の旅人も悠々と橋を渡ります。

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こちらもロンドン、トラファルガー広場

いろいろな有名人が登場しています。

ビートルズの四人組が演奏している曲は何でしょうね。

トラファルガー海戦の英雄ネルソン提督の立つ高い塔。

その下の二人の男は誰でしょう。

そう。あの刑事コロンボです。

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世界の旅第4巻アメリカ編。旅の絵本4 (安野光雅の絵本)

ここは西部劇の聖地と言われるモニュメントバレー。

岩の上にはカメラマン。

画面右下は映画シーンの名場面だとか。

ディスイズニューヨーク。

摩天楼の下のパレードは楽しさいっぱい。

こんなところにマリリンモンローを描くなんてやっぱり安野さんです。

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こちらは南部の港町ニューオリンズ

ジャズ発祥の地らしく、街角の演奏風景が描かれています。

さすが野球王国アメリカ。

背番号44はハンクアーロンだとか。

ラストページ。旅人は海の彼方に去って行きます。


 

 

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安野さんの旅の絵本。

日本編の制作はどうなっているのでしょう。

ペンによる下絵が次第に姿を現してきました。

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SL、客車。

駅前には馬車がいますよ。

貸し自転車の大きな文字。

ここは日本のどこなのか。

ひょっとして津和野のでしょうか。

「私から見ればなに自分の絵のどこがおもしろいのと思っていたんだけど、だんだん年も取りまして、そういえば日本も面白いところがないわけでない。一番イージーに描ける。楽ちんに描けるのは自分の思い出の中にあるの取り出した描けばいいわけ。何か日光東照宮の資料持ってきて描くとかというのは大変なんだけど、覚えていることを描くというのは何もしないでいい。畢竟津和野というところで生まれたわけですから、どうしても津和野を振り出しにしてそこから周辺に行くようなことになる。ところがよく考えてみると、例えばなまこ塀というのがありますが、全国行ってもどこ行ってもなまこ塀がある。どこに行っても日本は皆同じなんだ。一口に言えば。デリケート違いはありますけどもほとんど同じだ」

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これはお祭りでしょうか。

馬が走ってるって事は裏の草競馬

人々が熱狂しています。

どこか懐かしい田園風景。

ラクターなどない時代、日本中どこででも見られた農村の姿です。

青の山のふもとの郊外の田園地帯。

安野さんお気に入りのスケッチポイントの一つです。

ふるさとの山に向かいて言ふことなし。

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ただ黙々と描く安野さんです。


 

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安野さんは1926年大正15年。

この町の旅館の息子として生まれました。

幼い頃から絵が大好きで画家になることを夢見ていました。

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「私の父はたまたま泊まりに来た旅絵師に、こ子は絵が好きで絵描きになりたいと言うがどうだろうと聞き、私の絵を見た旅絵師はお手本を描いてあると言ってクレヨンで一羽の雀を描き「芸術の道は険しいぞよ」とかなんとか言った。私は絵描きになりたかったんだけどね。じゃあ絵描きがどういうもんかっていうのは知らなかったんでしょ。ただ絵を描いて暮らしていればそれでいいと思っていたんですね。でもだんだん大きくなると美術入門とか甲賀流忍術の極意とか、そういういろんな名著とかそういう本は出ていることは分かったので、講談社少年倶楽部に宛てて手紙を出して、僕は絵描きになりたいんですがどうしたらいいでしょ。そしたらね林田正という人からね、「勉強しなさい勉強しなさい」と勉強の仕方が書いてあって、芸術の道は険しい」

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安野少年が走り回って遊んでいた津和野の街角。

少年の日の記憶が次々と蘇ってきます。

今回制作中の旅の絵本とは違うもうひとつの安野さん思い出の津和野。

まるで即興演奏のように安野さんの筆が走ります。

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右手には安野光雅美術館。

赤い屋根の金太郎は安野さん自身です。

安野君の生家。

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「こういう風に俯瞰して津和野の暮らしを思い出しながら描いたのははじめて。わが心の津和野が次々と生まれてくる。寅さん見た映画の寅さん。マドンナの吉永小百合

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描こう。津和野へ帰った時のことを何度か出て、何度か戻ってきたけれど、その時のことしみじみ思う。6本のトンネルが、6本目のトンネルを抜けるとやっと帰ってきたなという感じがします。途中で小学校の門が見えたぞ。大橋が見えたぞ。青の山が見えたぞと、少年でなくてもね胸が苦しくなる。あふれかえるものがいっぱいなんで、

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降り立った時の気分何でもいえなくて、自分が国を出てよその国へ行って勉強してそうすると極端に言えば、自分の言葉が喋ってるっていうか、津和野勉から抜け出して、大人になっていくなんですけど、そういう気になって、弟がやってきてきてお兄ちゃん帰ってきたからっていう時に、何だお前の津和野弁はおかしいなって言って、そうして戻ってきた自分が三日もたたないうちに津和野弁になってしまう」

 

安野さんが宇部の高等小学校転学のため故郷を離れたのは13歳の時のことでした。

同級生の妹さんとの再会です。

「あなたは妹だよね。あいつ亡くなったのか・・・」

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画面にびっしりと描き込まれた安野さんの思い出の津和野地図です。

とくとご覧ください。

津和野駅と安野光雅美術館は画面左下です念のため。

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終戦後、山口県で小学校の美術教師をしていた安野さんは24歳で上京。

42歳の時不思議な絵を発表。

絵本作家になります。

以後、海外の賞を次々受賞しました。

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オランダの画家エッシャーの作品に刺激され描いた不思議な絵です。

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壁を登る煙突掃除の男。

でもどうして垂直な壁が登れるの。

階段があるようでないようで不思議です。

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こちらの絵もなんだか変。

画面右下にご注目。

ここにいる男たちは横からの視点で描いていますよね。

でも画面右上。

ここでは視点は上からです。

一つの画面にいくつかの視点を組み合わせることで、安野さんは現実にはありえない不思議な世界を創造しました。

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《あいうえおの本》あいうえおの本 (安野光雅の絵本)

文字のデザインと言葉遊びが一つに溶け合った、なんともユーモラスな楽しさいっぱいの絵本です。

安野さんがこれまでに世に送り出してきた膨大な量の作品たち。

絵本、画集、イラスト、エッセイ。安野さんは芸術のジャンルという壁を軽々と飛び越えてしまうマルチアーティストです。


 

 

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《絵本平家物語繪本平家物語 カジュアル版

安野さんが新境地を開いた代表作です。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。

沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。

おごれる人も久しからず。唯春の夜の夢のごとし。

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有名な那須与一が扇の的を射るシーン。

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安野さんは与一が市柿を鎮めようと

彼方の鬼を見ているところを描きました。

文覚被流。

元武士だったも文覚が伊豆に流される場面です。

荒れる海の神を鎮めようとする文覚。

ダイナミックな波の表現が目を奪います。

七年の歳月を費やした《絵本平家物語》は安野芸術の到達点を示す傑作です。

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1991年から安野さんは司馬遼太郎の有名な思索紀行・街道をゆくの写真を手がけることになりました。

司馬さんと安野さんの名コンビは、司馬さんの突然の死の時まで続きます。

街道をゆく最後の連載、濃尾参州記の挿絵です。

「司馬さんと過ごした取材旅行は楽しい日々だった。街道をゆくシリーズの濃尾参州記の取材で名古屋に泊まり、1日だけ東京に帰ってこなければならならなかったことがある。すると他の人たちが何の用事で東京行ったんだと噂話にした形跡があった。司馬さんにそのことを言うと、安野さんが本当はどこへ泊まったんだというのが話題で、たいしたことではないと言われた途端にエレベーターのドアが閉まった。あのとき司馬さんとの最後のわかれだった。司馬さんが亡くなった時涙が出て止まらなかった。司馬さんと過ごした日々は満ち足りていた。そんな日がいつまでも続くと思っていたのに実には諸行無常である。主さんの靴を遺品として二足もらった。これが不思議にピッタリと合うのだった」

さて旅の絵本シリーズ第5巻。スペイン編。旅の絵本5 (安野光雅の絵本)

続く第6巻デンマーク編。旅の絵本6 (安野光雅の絵本)

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第7巻は中国編です。旅の絵本7 (安野光雅の絵本)

安野さんは旅の絵本で初めて東洋の国を選びました。

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1980年代半ばから海野さんはしばしば中国への旅に出るようになります。

その時の感動が旅の絵本に結実しました。

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朝霧の立ち込める水辺。

これまでの西洋の風景とは違う、懐かしい水墨画風の趣です。

中国製の絹地に筆で描かれた釣り人。

向かいの男たちも悠然たる佇まい。

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旅人もゆったりと小舟で登場です。

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紹興近くの街の風景。

ちょっとヴェネチアに似ていますね。

運河を行き交う船。

団体旅行の人々。

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広場の猿回し生活感溢れる楽しい光景です。

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中国最高の名画と言われ、今年日本でも公開された清明上河図。(決定版 清明上河図)

作者、張択端へのオマージュとしてあなたはこの場面を描いたと言います。

安野さんの描いた橋は只今工事中旅人が小舟でやってきました。

中国でも有数の観光名所、桂林近くの景勝地です。

馬、荷車、ラクダの隊商。

どこかエキゾチックな雰囲気です。

中国編のラストページは黄土高原。

手に手にシャベルを持って砂地を行くのはこの地に植林する人々です。

砂漠化する大地。

大自然の営みへの人間の果敢な挑戦です。

広大な中国の山河や街角を過ぎ、馬の背に揺られながら旅人は悠然と去って行きます。


 

旅の絵本日本編はいよいよ彩色の段階に入りました。

ペンによる下絵の屋根瓦が存在感を増していきます。

カラフルになってきた駅前の風景。

馬車に乗り込む人。

自転車を借りる人。

人々のざわめき、子どもたちの声が聞こえます。

ところで今回の旅人はどこにいるのでしょうか。

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「トイレへ行っちゃった。大探ししたらトイレに行っている」

旅の絵本日本編。

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駅前風景は完成に向かっています。

こちらの田園風景もかなり緑が濃くなりました。

「四季を描きたいなと思いました。レンゲが咲いてる頃から、田を植えてそれから草取りをしてみようって、どんどん刈り取りをして脱穀してごめんなという、そういう一年間の農作業をずっと考えて、やりたいな。そうすれば一つの物語になる。その合間にお祭りをやる巡業のお相撲さんが来るかもしれない。それから楽しみにそして飲んで草競馬もやるかもしれないし、花見もやるだろうというふうに、楽しみの部分も」

旅の絵本日本編のテーマ。

それは安野さんの愛する日本の四季の風景。

普通の日本人の暮らしの物語です。

 

 

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2004年。安野さんは狭心症で倒れ手術を受けました。

半年後、今度は肺がんが見つかりましたが、放射線治療が効いて現在も、旅と作品の制作に多忙な毎日を送っています。

「私の胸の中に4センチくらいのガンがあるんですよ。レントゲンで見るとわかる。奥行きがあると聞いてびっくりしたね。私はね、フラットなもんだと思ったんだよ。言葉で言うと日に日に落ち着いてるね。だんだん落ち着きが増してると言うか、最初は驚いたけど、だんだん平常になった。ガンは参考までにいうと完治するってことはないんですね。完治するっていうのは死ぬ時。それがね本当にハードなの。だけども、生きていくっていうかこういうことなんだなと思ってね、子供の時から絵が好きで、たくさん遊んでいいと思って、ずっと今もそうで、戦争で絵さえ描いていれば機嫌がいいんですよ」

完成した旅の絵本日本編の一点、駅前風景です。

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トイレの塀の向こうに見覚えのあるとんがり帽子。

やっぱり旅人はここにいました。

お茶目な安野さんです。

日本の四季を描きたいと語った安野さん。

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春爛漫のお花見です。

老いも若きも、男も女も、人々は花の下に集い、心ゆくまで楽しみます。

まさに日本の原風景とも言うべき世界です。

車は自転車に限ります。

人々はゆったり暮らしています。

こちらもかつて日本のどこにでもあった村のたたずまい。

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奥に小学校が見えます。

「私の子どもの頃の世界でしたね。今の世界はあまり感心しない。率直に言ってね。私が子供の頃の電気がやっとついたような。私は40ワットの電気を部屋に一つ灯してそれで勉強しましたし、ちょっと上の人はもうランプやろうそくで、なんの不自由もなくね。電気がないからと言って不自由なこと言っていた人は一人もいないわけですよ。電気が来たからって便利だっていう人はいましたけど、不自由した人はいなかったね。今あの原子力発電所は停止しちゃって電気というものがなくなったとしたらどうなんだろう。無くなることはないんだけども少なくなったらどうなるだろう。そしたら、もう暮らせないってわけですよ。洗濯機はなきゃ困る。冷蔵庫がないと困るエレベーターがなきゃ困るそういう昔しにはもう帰れないから原子力止めたら困るっていう風になってるね。私はそんなことは絶対にないと思っているわけ。余儀なくされてでも生きていく。そしてその中からね。やっぱり掴み取るものがあって、楽しさというものがあって、だんだん生活というものが成り立って行くんだっていう風に思っている。だから楽チン楽チン文明だけをかけて行ってうつつを抜かすようになるよりは、地道に楽しく行った方がいいんじゃないかなえ。私のね、今が一番切実に来ない入っています」

安野さんの制作はまだまだ続いています。

旅の絵本日本編。

ラストステージ。

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手を振って旅人に別れを告げる人々。

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雲中一雁の雁のように、旅人はたった一人帆掛け船で去っていきます。

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日本という国に生きる人々に幸多かれと願いながら。

 

取材先など

 

 

放送記録

av98ingram.wpblog.jp

 

 

書籍

 

 

 

 

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