チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「美人画の神髄〜歌麿の技の錦絵〜」

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“UTAMARO”として世界でも名高い浮世絵美人画の巨匠、喜多川歌麿

歌麿は“青楼(=吉原)の画家”とも呼ばれ、上級の花魁ををはじめ吉原の遊女たちのさまざまな姿を描き出した。

また美人で評判の町娘をブロマイドのように売り出し大ヒットを飛ばした。

他の絵師を“木っ端絵師”と呼び、自分こそ“美人画の神髄”を捉えていると自負した。

美人画の可能性に挑み続けた歌麿の錦絵の魅力を伝える。

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喜多川歌麿 (新潮日本美術文庫)

喜多川歌麿 (新潮日本美術文庫)

  • 発売日: 1997/08/01
  • メディア: 単行本
 

 

日曜美術館美人画の神髄〜歌麿の技の錦絵〜」

放送日

2021年4月25日

 

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眉を落とした既婚の女性が頬杖をついてぼんやりと物思いにふけっています。

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果たして誰のことをやっているのでしょうか。

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はだけた胸を気にするでもなく口に楊枝を加えた遊女。

どこかふてぶてしさも漂う顔つきです。

喜多川歌麿は女性たちの心の内面まで描き出しました。

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「まるで歌麿と一緒に暮らしてるのかなっていうぐらい、その女性の本当に魅力が描かれてるんですね。どこで見たのかなって思うぐらい」

歌麿は江戸の女性たちの美を余すところなく描きだしました。

 

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美人で名高い町の娘たちをブロマイドのように描き、大ヒットを飛ばしました。

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歌麿は青楼の画家とも呼ばれます。

青楼とは吉原のこと。

これは寝間着姿の遊女が夜中に起き出して厠に行く時の姿。

遊女たちの素顔まで描いたのです。

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歌麿は第一人者だった。でもそれを歌麿は維持するために死ぬまで頑張って新しい作品先をつくるってことをがんばった」

歌麿は時に大胆な試みをしました。

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浮世絵版画の命とも言える輪郭線をなくしたのです。

白い打掛の下に華やかな着物を着た女性が後ろを振り向いています。

着物には輪郭線はありません。

歌麿が自らこう記しています。

「近頃、木っ端絵師達が下手な絵で異国にまで恥を晒している。私が美人画の真髄を見せてやろう」

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美人画の新たな可能性に挑み続けた歌麿の錦絵の魅力に迫ります。

 

 

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歌麿が一躍人気を博したきっかけとなったのが浮世絵の美人画で初めて大首絵を描いたことです。

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大首絵とは上半身をクローズアップにした絵のことです。

歌麿はそれまでの型にはまった女性の顔に微妙な表情を描き込んだのです。

その美人大首絵をご覧ください。

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熱心に手紙を読んでいる。

きっと恋文だ。

この女性。

眉を剃っている。

そして少し開いた口からお歯黒が覗いている。

それで結婚した女性とわかる。

それにしても手紙を握りしめ、目を近づけて読んでいるからきっととても大切なことが書かれているんだ。

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こちらの女性は手鏡を見て口を突き出しているように見える。

お歯黒の付き具合を確かめている姿なのだ。

普段人前では見せないそんな女性の表情を盗み見て、歌麿は面白いと思って絵にした。

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湯上りで暑いのか浴衣の胸をはだけているこの女性。

肩にかけた手ぬぐいで手を拭いている。

「浮気之相」というタイトルだけど、江戸時代の浮気というのは陽気で派手好きな恋多き女性のことも言ったらしい。

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振り返っているのは男の方を見ているのか。

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美しく髷を結い眉を剃っている。

既婚の女性。

気だるそうに頬杖をついて、虚ろな目でどこか遠くを見やるように物思いにふけっている。

一体何を思っているのか。

昔の恋の思い出か、それとも今の恋人のことなのか。

 

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宮崎遊さんは日本画を独学で学び美人画に打ち込んできました。

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これは宮崎さんの木版画作品。

3年前自らの作品が版画化されたことで、改めて歌麿に魅せられています。

歌麿は細部のこだわりがあったからこそ、一枚一枚の作品の女性の魅力を最大限に引き出すことができたんじゃないかなという風に感じます。この時代の既婚女性は眉毛を剃って描かれてんですけども、実は人物画は眉毛ってとっても重要なんですね。最後目がキリッと決まるぐらい。この絵はもうこの目だけで本当に物思いにふけっているのを見事に表現できているところがこの限られた線だけで、本当にすごいと思います。目尻が丸く描かれてるんですね。ちょっと丸みを。そうすることでキツイ印象ではなく、もし切れ長になるとちょっと不機嫌なのかなとか、思われそうな表情になったかもしれないんですけども。この口角が下がってるんですけども、もしこの口角が上がってたり口が開いていたら、また全然違う表情だったと思うんですね。ほんとこの目とこの口のバランスでこの表情が絶妙なバランスで、成り立っていると思います」

歌麿が美人大首絵を描くのに大きな役割を果たしたのが版元の蔦屋重三郎です。

歌麿は優れた企画力を持つ蔦屋との二人三脚で浮世絵界に頭角を現してきました。

蔦屋と歌麿のゴールデンコンビが生み出した大首絵。

新企画として美人で評判の町娘を売り出します。

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当時江戸の町で評判だった三人の美人。

いずれあやめかかきつばた。

三人ともとても美しすぎて、ちょっと見ただけでは違いがわからない。

中央が浄瑠璃富本節の名取、豊ひな。

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つぶらな瞳に通った鼻すじ。

話しかけるような表情。

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右は今の喫茶店にあたる水茶屋難波屋のおきた。

豊ひなに比べると鼻が高くて目が切れ長。

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左は評判娘、高しまひさ。

ややほっそりとした顔にすっきりとした目鼻。

一見同じように見えて実は特徴を微妙に描き分けている。

 

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もちろんブロマイドのような単独の絵もある。

こちらはおひさ。

団扇を手にして振り向くポーズ。

この頃まだ数えで17歳だったそうだ。

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おきたの方は水茶屋の娘らしく、お茶を持ち運んで振り向くポーズ。

歌麿の絵のおかげでおひさも、おきたも評判を呼び目当ての客で水茶屋は大繁盛した。

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歌麿美人画むにようにしようという試みをした。これ結構画期的ですよね。多分江戸の人は驚いたと思います。今見て同じように見えるじゃないかっていう人もいらっしゃいますけども微妙に違います。そのおきさのおきさの個性とで、例えばおきたがおきゃんな個性で、おきたがすごくおとなしいけど控え目で、というようなそういう個性までは描き分けられてはいないんです。それは歌麿自身が自分の考えを書いてるんですけども、似ていればいいもんいってもんじゃないと。そのことをねと理解すべきだというふうに堂々と書いてます。美しくなきゃいけないということです。哲学です。歌麿の」

江戸で唯一幕府公認の遊郭だった吉原。

1日に千両の金が落ちるほど賑わったと言います。

歌麿は足しげく吉原に通い、数多くの遊女たちを描きました。

そのため吉原を意味する青楼という言葉を取って

青楼の画家とも呼ばれるほどです。

歌麿が独特なのは遊女たちの表の顔だけではなく、日々の暮らしの中で見せる素顔を描き出したことです。

 

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午後二時頃、まだお客も少ないのでくつろいでいる遊女たち。

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真ん中の子は若くて位の低い遊女で、振袖新造と言う。

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右にいる見習いの少女禿の手相を見ているところ。

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上級の遊女・花魁は何をしているかと言うと、画面の外にいる易者に占いもらっている。

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よく見ると占いに使う竹の棒「筮竹」とお礼のおひねりがある。

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午後八時頃、店先で客を待つ花魁。

緋毛氈の上に座り、長い手紙をしたためている。

隣にいる見習いの少女禿に何やら耳打ちしている。

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膝立ちした姿勢で小首をかしげていいつけを聞く表情が可愛らしい。

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真夜中の午前二時頃。

お客が寝入った床を立って、寝間着姿の遊女が厠に用足しに行くところ。

さすがに顔はちょっと眠そう。

手に持っているのは懐紙と行灯の灯をこよりに移したあかり。

これで足元の草履を探している。

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夜明け前の午前四時頃。

床を抜け出した二人の遊女が何やら話し込んでいる。

火鉢の火を紙で煽っているこちらは客のものらしき男物の羽織をまとっいてる。

客の噂話でもしているのか。

聞いているほうもくつろいだ表情。

懐手をして煙管を手に持っている。

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「その時間時間に現出する吉原内部の日々の姿を描き分けた。これはまあそれまでと違う画期的なシリーズだと。これは午前二時。屏風の陰に床が敷かれていて、そこには男性客がいるということが想定されてますよね。ちょっとうつむき加減にして半分寝ぼけているのかもしれませんが、なんとなくこの物悲しい雰囲気が漂うじゃないですか。立ち姿全身像なのにこの遊女の気持ちが読み取れるような気分になると、そういうのはあのすごいなと思いますよね。歌麿ぐらいになると吉原に客じゃなくてもOKというような状況はあった推定されるので、そういう状況で観察はしてますよね。観察してないとこういう絵はかけない」

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歌麿は憧れの存在である吉原の花魁だけでなく、普通美人画には描かれないような道端で客を引く遊女まで独特の表情を描き出しています。

夜な夜な街の辻に立って客を引く夜鷹という最下層の遊女。

黒い着物を着て手ぬぐいをかぶって端をくわえている。

本当はそんな境遇のはずだけど、歌麿が描くととてもそんなふうには見えない。

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でもこの遊女はちょっと凄みがある。

吉原でも堀沿いの小さな店の下級の遊女。

胸をはだけつま楊枝をくわえる顔つきはどこかふてぶてしさがある。

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「こういう姿を作品にしようっていう作家さんが今までいたんだろうかって思うぐらいちょっとびっくりした作品なんですけども、めちゃめちゃたくましく見えますよね。か弱さとか儚さとかそういうものはもう感じないね。たくましさは、眉にあると思います。この眉毛をもしもちょっと隠してしまうと少し優しい表現が気じゃないですか。表情というかちょっと丸くなる感じなんですけども、この眉で強さたくましさがより強調されているなという。本当にこの目元から強い生命力を感じてると言うか、その強さがあるからこそ、つま楊枝を使って口に入れててももう平気みたいな堂々とした感じですよね。どん底の環境の中でたくましく生きている女性もいると思いますし、そういういろんな環境の当時を生きる女性の魅力を全部引き出して作品にしたいっていう気概がこの作品からも伝わってきますね」

 

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歌麿美人画の第一任者として人気を博したのは寛政の時代。

幕府では老中の松平定信が中心になって寛政の改革を推し進めました。

倹約が励行され、華美な風俗の取り締まりや出版の統制が行われました。

そして美人大首絵も町娘などの名前を入れることが禁止されます。

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すると歌麿はその禁止をかいくぐる工夫を凝らします。

湯から上がったばかり。

手ぬぐいで汗を抑えているんだろうか。

どこか色っぽい感じだけど髪の結い方から後家さんだとわかる。

さて歌麿が工夫したのはこのタイトルの横にある図。

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これは判じ絵というもの。

この中に名前が隠されている。

上にあるのはまさに太陽が昇ってくるところで朝日。

その下には碁盤があって碁。

その下には髪の毛があって毛。

すなわち朝日屋後家と読める。

歌麿は名前が書けないという規制を逆手にとって、図を読み解きながら美人画を楽しめるようにした。

 

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合わせ鏡を使って襟足の辺りを見ているのは美人で評判の水茶屋の娘・高島おひさ。

これも判じ絵がある。

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一番上には田。

鹿島踊りを踊っているので鹿島。

その横で火が燃えているのでひ

そして徳利の横に杯でさ。

蛇は巳年のみ。

その蛇の口から出ている舌がくの字をしていて、したく。

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これを読み解くと高島ひさの身支度となる。

この歌麿の工夫に対し幕府は今度は判じ絵で名前を書くことも禁止しました。

歌麿はその禁止と前後するようにして新たな画題を手がけます。

市井の女性達が働く姿を描くようになったのです。

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かまどの周りで家事をする女性達。

子供をあやしながら漆のお椀を拭いているかと思えば、その前では包丁で茄子の皮をむいている。

こちらは火吹竹を吹いてかまどの火を起こしている。

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湯をくもうとした女性が煙に顔をしかめている。

それぞれ仕草も表情も色々な女性達。

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こちらは機織りに勤しむ女性。

両手を器用に動かして一生懸命に織っている。

手縫いを姉さんかぶりにして、いかにも働く女性。

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鮑採りを終えて岩場で休む半裸の海女たちの姿。

今取ってきたばかりの大きな鮑をかごに入れるところ。

海女は赤い腰巻の水を絞り、口にはまだ道具をくわえている。

こちらの海女は濡れた黒髪をくしで透きながら赤ん坊に乳を吸わせている。

片足を水につけながら座る海女。

上半身をあらわにして白い肌を見せている。

後ろの海女が魚の方を指さしている。

結構大胆なヌードだけど、歌麿は何か言われたら海女だから裸になるのは当たり前だというつもりだったのだろう。

 

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「幕府の統制をかいくぐりながら作品を作ってかなきゃいけない方ですよね。そういう点で今まで描いてないようなジャンルとか姿勢とか所に活路を見出させるえないっていうところがあって、仕事している女性、日常の女性、子供をあやしてる女性を描いても私は女性の魅力を最大限描くことはできるんだ。描いてやるぞみたいな、自分を追いやるんだったらそれに適応して、今までに負けないものを描いてやるみたいな気概、反骨真は少なくてもあったと思います」

歌麿美人画を描くときに様々な工夫を凝らしました。

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その一つがすだれやかややなどを通して女性を透かし見る趣向です。

二人の女性が何か食い入るように熱心に見ている。

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手前の女性は御殿女中らしくて、髪飾りも質素なのに対して御簾の奥に透けて見える女性は何とも豪華な髪飾り。

高貴な武家の姫君らしい。

御簾ごしだとどこか上品で奥ゆかしく見えるような気がする。

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衝立にもたれて娘を見やる若者。

娘の方は若者の薄い羽織を顔にかざして見あげている。

こんな風に戯れていかにも仲良さそうな感じだけど、娘の顔が半分だけ水玉模様の羽織を透かして見える仕掛けになっている。

最後は蚊帳。

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画面にいっぱいに蚊帳が吊られているが、蚊帳の外と内とでは描き方が違っている。

寝巻きに着替えている女性がくっきりとしているのに対して、蚊帳の中でかんざしを抜いて寝ようとしている女性はちょうどベールがかかったようだ。

こちらでは蚊帳を吊っている女性が振り向いてうちわを仰ぐ女性と話をしている風情だけど、本当にうっすらと顔に線が出ていて、蚊帳の中にいる感じになっている。

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浮世絵の復刻を手掛けている。

アダチ版画研究所です。

歌麿がこだわった透かし見る趣向。

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摺師の京増与志夫さんに摺ってもらいました。

復刻するのは三枚つづりの婦人泊まり客の左の一枚。

蚊帳を吊る女性と中でうちわを仰ぐ女性の図です。

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まず最初は全体の輪郭線と黒髪を墨で摺ります。

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続いて色ごとに摺り重ねていきます。

いよいよ透かし見る蚊帳の部分です。

まず蚊帳のベースを草の色で摺ります。

ただ女性の顔や体にはこのベースの色は乗せません。

続いて蚊帳の網目を少し暗い草の色で摺ります。

まずは横の線。

線は顔にもかかっています。

続いて縦の線。

白い顔にも蚊帳の網目が入りました。

離れて見ると顔や体もかすかに緑っぽく見え、蚊帳の中にいる感じが出ています。

そして最後。

蚊帳の外に立つ女性の髪の毛に墨を摺り重ねます。

これだけで外にいる女性がクリアーな感じになり、蚊帳の中の女性との対比が鮮やかになります。

歌麿の透かし見る趣向にはスリの細やかな配慮がなされているのです。

 

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「女性の肌の上にこの模様がかかってきたりするっていうのが本当に私には怖くて出来ないんですけども、この蚊帳のつけたところの涼しさというものを表現しようとしてたのかなと。こういう光景だよねって蚊帳の中に入ると人物がおぼろになるっていう、すりガラスみたいなイメージですよね蚊帳の中って。ぼんやりした中でちょっと美女が浮かび上がってくるところに美しさを感じてたのかもしれないですね。これ女性の顔の真ん中にこの黒いドットが入っている。間違えるとブラックジャックみたい。それでも魅力的に見えてしまうのは歌麿の見せる表現力のすごいところだなと思います。こんなに面白いんじゃないかなっていう風に技術って頭の中で膨らんで行くんですけども、本当に色んな事を一つできるようになったら次こういうことも試してみようかっていう風に挑戦していた。歌麿ならではの表現じゃないかなと思いました」

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歌麿は時に極めて大胆な趣向に挑みました。

浮世絵の命ともいえる輪郭線をほとんどなくすような試みをしているのです。

華やかな衣装を見せようとするかのように、花魁が身を反らして後ろを向いている。

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顔にこそ輪郭線が引かれているけど、この衣装を見て。

上に着ている白い打掛は衣文線が見えずに薄く陰影がついているし、よく見ると打掛だけじゃなくて模様も付いた着物にも黒い輪郭線がない。

輪郭線がなくなることで何か不思議な雰囲気が醸し出されるような気がする。

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湯上りの二人の女性。

座って手ぬぐいを絞っているそのその白い腕が浴衣から透けて見える。

輪郭線がないから透明感が出てる気がする。

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それだけじゃなくてぬか袋をくわえている顔を見て。

頬のところに輪郭線がない。

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もう一人。

手ぬぐいで耳の辺りを拭いている女性の顔の線がない。

でもそのせいか頬がふっくらしている感じもする。

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「人物の肌の輪郭線が、多くの美人画家さんがそうなんですけども、できるだけ細く薄く表現されてるんですね。線をなくしてしまうっていう大胆な表現方法だと思うんですが、肌の白さや柔らかさを最大限に表現しようとしたのかなと思いました。肌もより潤って柔らかいようなすごく白いだろうなってのが伝わってきますね。反発される危険もあったと思うんですけどもそれよりも本当によりリアルな自分の見たものを美しいものを表現したいっていう欲求の方が強かったんじゃないかなと思いました」

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手紙を読み終えてどこか放心したようにも見えるこの女性。

この女性の着物も衣文線を省き陰影を施すようにしています。

歌麿が当時美人画の浮世絵師としていかに自信を持っていたかこの絵の中にこんな思いを綴っています。

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「近頃、蟻のように湧出した木っ端絵師どもがただ色彩を頼りに下手くそな絵を描き、異国にまで恥をさらしているのが嘆かわしい。私が美人画の真髄を見せてやる」

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「絵の中に堂々とそういうこと書いても世間が許す。版元が許す。買う人が許すような環境になったということですよね。強烈なプライドを大事にし意識ってのありますけどでもそれを維持するために死ぬまで頑張って新しい作品を作るってこと神速頑張ったそう見てると思ってね大事にしたっていうことをキープするためにそれで努力してるわけです」

 

歌麿の美人大首絵を始めて世に出してから一年ほど経った寛政12年。

ついに美人大首絵が禁止されます。

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しかし歌麿はそれでも美人大首絵を描き続けています。

女性が提灯の光を覗き込んでいる姿。

その顔を浮かび上がらせるように光があたり、影の部分とのコントラストが鮮やかです。

タイトルの横にはこんな文章が添えられています。

この相は穏やかで上品で誠実。心美しく誰にも愛される。

こうした文章は品行方正な女性であることを強調し、幕府を刺激しないようにしたのではないかとも言われます。

文化元年。1804年。

歌麿は突然奉行所に呼び出され取り調べを受けます。

禁令に触れたのは美人画ではなく、絵本太閤記に題材をとった武者絵でした。

結局、歌麿は手鎖50日の刑罰を言い渡されました。

手錠をはめたまま50日間謹慎したのです。

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歌麿の最晩年に出された本があります。

青楼の画家と呼ばれた歌麿にふさわしく、吉原の遊女の様々な様子が描かれています。

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絵の最後に歌麿は自画像ではないかと思われる絵師の姿を描いています。

遊女たちが熱心に見つめる中、大きく羽を広げる巨大な鳳凰の像を描く絵師。

歌麿が亡くなったのは刑罰を受けた2年後の1806年でした。

 

 

取材先など

 

放送記録

av98ingram.wpblog.jp

 

 

書籍

歌麿「艶本 葉男婦舞喜」 (定本・浮世絵春画名品集成)

絹本 江戸時代・絵師 歌麿 浮世絵 春画掛軸 コレクション

歌満くら―大判錦絵秘画帖 (浮世絵春画名品コレクション 1)

江戸春画 浮世絵師列伝 歌麿から北斎まで

■激レア喜多川歌麿春画『しなさだめ・全12図』カラー彩色江戸時代艶本枕絵卍遊女遊郭絵本春本和本浮世絵古文書木版写本唐本古書古地図■

浮世絵秘蔵名集 全4冊揃 8 葛飾北斎 喜多川歌麿 鳥居清長 勝川春章 学研 6821550 解説書付 春画

おとなの愉しみシリーズ2 英語と現代文でたのしむ春画 喜多川歌麿「願ひの糸ぐち」

7.春画 浮世絵 艶本 枕絵 春宮図 木版画 秘画 裸婦 男根 美人画 検 国芳 北斎 芳年 広重 英泉 歌麿 国貞

喜多川歌麿 春画 ポスター インテリア グッズ 雑貨 美術 アート 絵画

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展覧会

 

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